PSGを振り返る


ここではWikipediaのPSGの項目(2005/9/17現在)を中心にいろいろなページで得た情報、これまでにPSGを聴きいてきた経験を基に改めてPSGについてのまとめと、ちょっとした戯れ言を書いてみました。
全く違うということはありませんが細かいところで間違っているということがあるかもしれませんので予めご了承ください。


1、とりあえず基本事項
PSGとは「Programable Sound Generator」の略で直訳すると「プログラム可能な音楽装置」になります。
PSGにはいくつか種類が存在しますが、
音(メロディー)の発生装置3、ノイズ音発生可能
という点が共通しています。

PSGは同時発音数3音ですがこれを厳密に説明するとモノフォニック(1音のみ発音可能)チャンネルが3つあるという意味になります。
どういうことかというと、ゲームではBGMだけでなく効果音(ドラクエで言えば「ピッ」という決定音や呪文を使った時の音)も3音の中で鳴す必要があります。
最大同時発音数は、3音鳴っている状態で4音目を発音するには一番初めに鳴っていた音が消される、という仕様があるため通常のままではBGMがブツブツと途切れ、聞こえが悪いものになる可能性があります。
それを、
・チャンネル1(メインメロディー)
・チャンネル2(サブメロディー、効果音)
・チャンネル3(ベース)
というように設定することによって曲を大きく壊すことなく、また長めの音を使った効果音も途切れることなく鳴らすことができます。
この「モノフォニック複数チャンネル」という仕様はPSGだけでなくスーパーファミコンの音源でも採用されています。(意図してやっているのかやむを得ずやっているのかは分かりません。またその他のゲーム機はよく分かりませんがおそらく同じ仕様だと思われます)


2、PSGチップ
2-1、AY-3-8910
昔からコンピューター音楽に精通している人にとってPSGと言えばこのチップのことを言うようです。
アーケードゲームなどで広く使用された名機。
このチップは、
・矩形波発生装置 3系統(Duty[デューティー]比50%[1:1]固定)
・ノイズ発生装置 1系統
・矩形波+ノイズのMIX
というのが主な仕様。
ただしノイズは1チャンネルで独立しているものではなく3チャンネルのいずれか割り振る必要があり、音量もそのチャンネルに依存します。
そのため3音鳴っているところにリズムとしてノイズを使用するということができません。
MIXは矩形波とノイズが2音同時に発音しているように聴こえますが実際は高速で矩形波とノイズを交互に切り替えて発音させています。
構成でいうと以下のような感じ(と思われる)。
Ch-A [矩形波 or ノイズ or MIX]
Ch-B [矩形波 or ノイズ or MIX]
Ch-C [矩形波 or ノイズ or MIX] ただしノイズは1系統のみ使用可。

なお一部FM音源に搭載されているSSG(Synthesized Sound Generator)は名前が異なるだけでAY-3-8910と同じ性能を持っています。


2-2、SN76489
音質がAY-3-8910と若干異なるらしい。(未確認)
ノイズチャンネルが独立しているので、矩形波の音数に関係なく使用でき音量も独立して設定が可能。
構成は以下の感じ。
Ch-A [矩形波]
Ch-B [矩形波]
Ch-C [矩形波]
Ch-D [ノイズ]

※「パソコン」ではなく「マイコン」と呼ばれていた頃のコンピューターや、アーケードゲーム等で上記2つのチップがメイン音源として稼動しているものもありました。(マイコンはバージョンによってサウンド無しやBEEP音のみ、といったのもあるようですが何かと種類が多いので詳しくは分かりません)


2-3、ファミコン音源
ファミコンで育った世代にとってPSGといったらファミコン音源のことを指します。
ファミコンの音源はCPUにサウンド機能を追加した特殊なもので、その特殊CPUの名前を取りRP2A03と呼ばれたり、サウンド部の名称を取りpAPUと呼ばれたりしています。
pAPUとは「pseudo Audio Processing Unit」の略で訳は「擬似音声処理装置」となります。
チップ単体として存在しているわけではないからpseudo(擬似)としているのではないでしょうか。

※ファミリーコンピュター(互換機ではなく純正機)は過去に「初代(初期型)」と呼ばれるものと「AV仕様(ニュー)」と呼ばれる2種類を発売していますが、初代ファミコンのCPUはRP2A03G、ニューファミコンはRP2A03Hを搭載しています。(シャープから発売されていたツインファミコンはどうなのでしょう?)

音源自体も上記2つのPSGとは違いファミコン独自のカスタマイズが施されており、
・矩形波発生装置 2系統(Duty比50%[1:1]、25%[1:3]=75%[3:1]、12.5%[1:7]切り替え)
・三角波発生装置 1系統 4bit 音量固定
・ノイズ発生装置 1系統
・DPCM 1系統 音量固定
という仕様を持ち、構成は以下の感じになっています。
Ch-A [矩形波 Duty比50% or 25% or 12.5%]
Ch-B [矩形波 Duty比50% or 25% or 12.5%]
Ch-C [三角波]
Ch-D [ノイズ]
Ch-E [DPCM]

ファミコンPSGは2チャンネルある矩形波でメインメロディーとサブメロディーを担当し、三角波はその音の特性からベースを担当していることが多いです。

ゲームボーイの音源もこのpAPUを使っているようですがステレオ仕様になっていたり(といっても左、中央、右の3つから選択可能。MIDIのコントローラ10でいう1、64、127です)、3チャンネルとも矩形波を選べたりできます。
思い返してみると自分は三角波を使った音を聴いたことがない気がしますが実際のところは使えるのでしょうかね?


3、音色
PSGをなんとなく知っているという人にとっては「Duty比」という見慣れぬ言葉が気になったと思われます。
これは矩形波の音色にあたるもので、波形1周期におけるパルス幅の割り合いをDuty比と言います。

※以下の波形図は理想的なものでありファミコンで実際に使われているものとは微妙に異なります。

3-1、Duty比50%
Duty比50%はMIDIでいうとプログラムNo,81のような音で、AY-3-8910やSN76489で使われていた矩形波は全てこの音になります。
矩形波(square wave)といったらまずはこの音ですね。
ユニゾンが美しい音
図1、Duty比50%(1:1)の波形の図
サンプル音声
mck Wikiに公開されているサンプルをmp3化)

比が50%(1:1)なので1周期内のパルス幅がHighとLowで半分ずつなのが確認できます。


3-2、Duty比25%=75%
ファミコン音楽をMIDIで再現するのに少々厄介な音で、50%をオクターブ重ねした感じの音です。
地味な音(?)
図2、Duty比25%(1:3)の波形の図
サンプル音声
mck Wikiに公開されているサンプルをmp3化)

ちなみにpAPUではDuty比75%という設定もできますが波形としては25%のものが正負反転しているだけになるので同じ音になります。
地味な音(?)位相反転版
図3、Duty比75%(3:1)の波形の図
サンプル音声
mck Wikiに公開されているサンプルをmp3化)



3-3、Duty比12.5%
MIDIではプログラムNo,8のClaviのような音をしており、個人的にはドラクエのエンディングで兵士が吹くトランペットの印象があります。
あくまで個人的に。
癖のある音
図4、Duty比12.5%(1:7)の波形の図
サンプル音声
mck Wikiに公開されているサンプルをmp3化)



3-4、三角波(triangle wave)
三角波はその名の通り波形が三角形をしている音です。
ファミコンの三角波は4bitのため、なめらかではなく階段状(2の4乗=16段階)の三角形をしています。
そのため「ジー」とも「ビー」とも聞こえるノイズが混ざった音になっています。
たまにリードとして使われた音
図5、三角波の波形の図
サンプル音声(サンプル音声にノイズはありません)
(FF3「果てしなき大海原」より)

上の画像はファミコンから波形を取ったものではなく画像を加工する過程でギザギザになってしまいましたがイメージとしてはこのような感じです。(都合よく16段ぽいし)

※ファミコンエミュレータの一部にはサウンド設定に「理想三角波」という項目がありますがこれを選択する事によってノイズを取り除いた三角波を出力してくれます。

音が似ているので勘違いしていましたが三角波と正弦波(sine wave)は全くの別物になります。
しかし何も知らない人(自分)にとっては聴き比べでもしない限り音の違いは分かりにくいです。
これもギザギザになっちゃいました
図5、正弦波の波形の図
サンプル音声
(FF3「果てしなき大海原」より)



3-5、ノイズ
ノイズパートはホワイトノイズを発音するもので、よくある例としてテレビの砂嵐で聞く事ができる「ザー」という音がそれになります。(最近のテレビは砂嵐チャンネルに合わせても音が出ないようですね)
一見何の面白味の無いパートに思われますがBGMのリズムとして使われたり、炎や風の音などの効果音として使われたりと調整次第で様々な音に変化してくれるので矩形波、三角波と同様に重要な役割を果たしました。


3-6、DPCM
DPCMはPSGでは出せないドラムや人の声といった音声をサンプリングしたものを発音させるパートです。
DPCMのDはDelta変調の頭文字らしいですがどういった意味があるかよく分かりませんでした。
おそらくADPCMと同じ、冗長性に関した音声圧縮関係のことだろうと勝手に思っていますが実際は?


4、拡張音源
ゲームをより豪華にするにはグラフィックが重要ですが、やはりサウンドも欠かすことはできません。
基本的にメロディー3音+ノイズという構成だけでは満足できなかった(?)メーカーが独自に開発した音源をソフト側に搭載して音数を増やすという工夫をしていました。
ここではその拡張音源をまとめます。

4-1、SCC
MSXのグラディウス2に初搭載された発音数5音の音源。
MSXはAY-3-8910を使用していたので合計8チャンネル使用することができました。
「Sound Creative Chip」という正式名称がありますが一般的にはそれぞれの頭文字を取った「SCC」で名が通っており、おそらく拡張音源の分野では最も有名なものだと思われます。
音楽自体を聴いたことがなくても名前だけは知っているという人も多いのではないでしょうか。(自分がそうです)
なおSCCが搭載されていたのはMSX用ソフトとアーケードゲームのみでファミコンソフトには搭載されませんでした。


4-2、RP2A33
ディスクシステムに搭載されていた発音数1音の波形メモリ音源で、質感がFM音源に似たPWMという発音方式を持つ音源。
波形メモリ音源とは、PCM音源のように記録した波形を発音する音源です。
PCM音源と違うところは記録できる波形がわずか数十バイトなのでここに記録された波形を1周期として使用されます。
PWM(Pulse Width Modulation)とは矩形波のパルス幅(Duty比)を変化させることによって様々な音を発音させる方式です。

RP2A33には他にFDSという名称もあるようですがどちらが正式かは不明。


4-3、VRC6
コナミのファミコン用拡張音源。
・矩形波発生装置 2系統(Duty比6.25%、12.5%、18.75%、25.0%、31.25%、37.50%、43.75%、50.0% 8段階より切り替え)
・鋸波発生装置 1系統
という発音数3音の仕様でpAPUと合計すると6音使用可能になります。
50%と12.5%付近の音はなんとか聞き分けられますがそれ以外は25%の音との判別が難しいです。(困った耳)

搭載されたゲームは、魍魎戦記MADARA、エスパードリーム2、悪魔城伝説。(他にもある可能性あり)


4-4、VRC7
コナミ開発。
2オペレータ、発音数6音のFM音源。
ラグランジュポイントというゲームにのみ搭載されたファミコン唯一のFMサウンド。


4-5、N106
ナムコ開発の波形メモリ音源。
正式名称は「Namco106」で最大発音数8。
女神転生2、ローリングサンダー等に搭載されていた。


4-6、その他
あまり有名ではないであろう拡張音源です。

・MMC5(Memory Management Controller 5)
HAL研究所が開発したpAPUと同等の矩形波を2音発音できる音源。
音源というよりは拡張メモリとして有名。
・FME7
サン電子開発。
AY-3-8910とほぼ同等(?)。
サン電子といったら「いっき」しか思い浮びません。
・Namco163
ナムコ開発ということ以外詳しい仕様は分かりません。


5、PSG以降と現在(ちょっと蛇足)
コンピュータ、アーケードゲームではPSGと入れ替わる形でFM音源時代へと突入します。
いわゆる「職人」と呼ばれる人達が登場した時代です。
FM音源では音数も増え、音色自体も自分でエディットできるようになったのでPSGよりも更に幅広い音を出せるようになりました。
コンシューマ分野ではファミコン以降、PCエンジンやセガゲーム機という数々の枝葉がありましたが結局はスーパーファミコンのPCM音源へ行き着くことになります。
そして現在では音質の良いPCMが当たり前に使われ、チャンネル数も制限で困りにくいほど増えました。
ゲームソフトのメディアがCD、DVDになったことによりBGMはディスクを読み込みながら流すという方式も取られています。
行き着くところまで来たのかもしれません。


6、おわりに
う〜ん、深い。
奥が深く、しかも新鮮で、初めて知ることがとても多かったです。
Duty比についてもその呼び名と詳しい内容まで解りましたし、ファミコンのCPUの型番がRP2A03だったことなんて今回調べなければおそらく一生知らずにいたでしょう。
PSGについて大体分かっているつもりでいましたが、結局の所ほとんど知らなかったということも思い知らされましたし...。
所詮安価なチップ、という認識を改めなければいけないようです。
いや、機械的、電気的観点から見れば実際は単純なものなのかもしれませんが、そういった専門知識無しでPSG並びにファミコン関連を調べてみると、、、ホント深いですよ。

深いからにはもう少し詳しい内容を書きたかったのですが、そうするにはどうやら理系の知識が必要になりそうなのでこのくらいでギブアップします。
なんかスペックの紹介程度な解説でしたがPSGをより楽しむための基礎知識としては十分ではないでしょうか。

ところで、今のゲーム音楽は使える音色や音数に制限があった頃と比べて感動が少なくなった、という声をたまに見かけることがあります。
実は自分もそう思っている内の一人で、昔と比べて印象に残るものが少なくなったと思います。
もちろん素晴らしいと感じる曲はありますし、ゲーム機が新しくなるにつれて音が豪華になったことにも驚きましたが、なぜでしょうか、これまでに制限の中で試行錯誤した音楽聴いてきたためか昔ほど感動が得られにくくなった気がします。
生意気言ってスイマセン。
データ容量増加により使われる曲数が増え、1場面に1曲のみという使われ方や、ゲーム全体で100曲程度用意されるということが珍しくなくなったため曲の印象が薄くなるということも原因の一つなのかもしれません。

「制限は美しい」
というナイスな表現が某所にありましたがまさにその通りな感じもします。
皆さんはどうお考えですか?

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